あるソル日記

ある日、ある場所、ソルアの日記

筆跡を追う

「これは、僕が書いたものじゃない。」
浜坂は言った。手帳に書かれた字を見て。
筆圧によって残された凹凸の筆跡には古文のメモのようなものが書かれていた。
僕はその筆跡をなぞり書き、本来の文章に戻す。

浜坂の友達には高崎という女の子がいた。
変わり者だが、明るい子だった。
高崎は転校する最後の日、学校帰りのバスに乗らず行方不明になった。

文字を元の筆跡通りに展開すると周囲に線香の煙のような線を纏った煙が立ち昇った。
高崎の記憶のカケラ。
煙を口に含むと高崎の記憶が自分の記憶のように流れ込んできた。
僕は知りたい。
彼女がどうしていなくなったのか、何を考えていたのか。

気付けば高崎が座っていた空白の席をぼーっと見ていた。
「なにみてるの?」
と春香に話しかけられるまでずっと見ていたようだ。
「い、いやぁ、ちょっと向こうが気になってね!」
「外?」
言い訳をしようと慌てて窓際に駆け寄った。
いつも高崎が見ていた風景そのままだった。
いいや、一つだけ違うものが目についた。
窓の淵に、パラパラマンガの一コマ一コマのような絵が横一列に描かれていた。
馬がコミカルに走っている。そんな感じの。

「それ、俺の上着。」
昇降口の靴箱の下に置いていた4人の荷物は制服の上着も巻き込んでグチャグチャに隅にまとめられていた。
彼女はハッと自分の荷物だけを取って手を引いた。
「ごめんなさい、あまりにも埃まみれだったから…気になって!」
彼女はバスには乗らず、荷物を抱えて休憩所の方へ駆けて行った。
上着には埃なんて一つもついていなかった。
…………

ずっと前に見た夢なんだわ。