あるソル日記

ある日、ある場所、ソルアの日記

飛び降りる様な速さで塔を駆け降りた。

何かを話していた…、クロスを腕で突き飛ばして…。
大通りを駆け抜けて、南の城門にたどり着く。
振り返ると、クロスが着いて来ていた。
「着いて来ないでよ」
私はクロスにそう言った。
「――、―――!」
何を言っているか分からなかった。
けれど。
一歩踏出して、やっぱり着いて来ようとしていると分かった。
「一歩下がってよ…!着いて、来ないでよ!」
鉄の格子。
地面をえぐる様な音を立てて、私とクロスの間に隔たりを気付いた。
こんな風に、全ての方角の門が閉じたのかな、なんて…思う。
…何も格子の向こう、雪の国の内側で唖然とするクロスに何も言わず、南へ駆け出すと、クロスが…私の名を呼ぶ声だけ聞こえた。
ごめんね。
 
見た事ない様な背の低い、綺麗な草花ばかりだ。
いつも、雪の国の塔からこの場所を見ていた。
綺麗。
けれど私は、雪原や、水晶の城の方が好きだったなと、思う。
草原を歩いていると。
何かが走って来る気配がした。
クロスじゃない。
数頭の狼かを引き連れた、白の獣だった。
囲まれた。草原の中。
「どうして止めるの…?」
辺りを見回す。
私を取り囲む狼達。
驚いた。
私がこれだけの事を出来た事。
白い獣のイルアさんが連れて来た狼達を一掃した。
「イルアさんでも、容赦しないよ…」
自分の声が、自分の声じゃない気がした。
「…。」
イルアさんは私を見据えて何も言わない。
「…鎮魂歌を唄ってよ―…」
私のために。
イルアさんが目を細めた。
…哀れんでいるのかしら…。
なんて、思ってたら、気付かなかった。
「俺としては、手荒な事…したくなかった」
「…着いて来ないでよって、…言ったのに―!」
急に、お腹が痛かった。
一瞬、息が吸えなかった。
背中が、暖かかった。
…。


ねぇ、暖かい。
暑いくらい。
私、また眠ってるんだね。
どうして連れ帰って来たの。
置いていってくれれば良かったのに。
…あーあ。
また夢から覚めるんだね。
君は私を怒るんでしょう?
…眠ったふりをしていようかな。